こんにちは、UAV(リモートセンシング)技術者の長岡達哉です。高専でリモセンを学び日々の仕事で活用しています。
最近はUAV測量の活用が盛んになってきましたね。ドローン機体の性能向上と価格低下が後押しして、測量や工事の現場のIoT技術として利用が進んできました。ところが最近、写真ではなく、UAVレーザーの利用が増えてきました。それはなぜか分析しました。
そもそも写真撮影だけがUAV測量だと思っていた
本来、写真測量は飛行機などから撮影した空中写真から対象物の位置・形状を復元する技術です。衛星や航空機などで行われた写真測量も、ドローンの登場で大きく変化しています。高価で専門的な知識とテクニックが必要な写真測量が、ドローンとPCがあれば可能になったのです。しかし、「写真測量」から得られる対象の位置・形状は、実測データではなく様々な問題があります。
UAV写真測量の問題点
- 地上点(評定点と検証点)が大量に必要になり解析も長時間かかる。
- 撮影中の日差しや反射で撮影にムラがあり、計測も写真合成も難しい。
- 写真なので被写体の後ろ(見えない部分)はデータ化できない。
UAVレーザーは何が違うの?
UAVレーザーには、LiDAR(ライダー)という計器が搭載されています。LiDARからレーザーが照射され、対象までの距離・反射強度を計測しています。毎秒何万~何十万と繰り返しレーザーを照射することで、広域のデータが迅速に得られます。また、地上から見上げて日差しが見えるところならデータを取得できるので、写真と違って草が生えていても、地表面が計測できます。写真が苦手とする傾斜地にはレーザーが向いています。さらに、地上点(基準点と検証点)の設置が少なく済むため広範囲の計測であるほど作業時間が短縮されます。なお、機体費用が高額なため「計測」だけでは写真より高額になります。
作業フローはどう違うのか
写真も大まかな作業フローは同じですが、測定範囲が大きい場合はレーザーで計測したほうが得策です。
写真は画像から三次元形状を復元するため、地上に標定点が必要です。したがって、測定範囲が大きくなるほど、多くの標定点が必要です。また、三次元形状復元計算は所定の精度を満たすまで標定点を入替え解析するため、とても長い時間がかかります。対して、レーザーは実測データのため、標定点は不要です。必要なのは、実測データが正しいかどうかを判定する基準点・検証点です。この点、成果品のデータを直接取得するレーザーが、作業時間や精度管理でリードしています。
コストはどっちが安い?
撮影と計測は基本的に料金が異なり、機体自体も価格差が大きいため測定だけにかかる費用はレーザーが約1.5~2倍ほど高価になります。しかし、測定範囲が大きくなると写真では、地上点の設置数がとても多く(例えば写真の場合80点に対しレーザーでは6点で済む)なることで設置コストが膨大に膨らむだけでなく、傾斜地を含むと設置にとても苦労します。一方レーザーは、数ヶ所の地上点設置で計測ができるので人件費が抑えられるだけでなく、迅速に計測にあたれます。また、写真の場合、三次元形状復元計算に長い時間を要しますが、計測データがそのまま成果になるレーザーは人件費の面でも有利です。一連の作業フローでは、ある程度の広範囲を一度に測定する場合、レーザーのトータルコストは写真と同程度になり、より広範囲になるとレーザーが安くなるケースもあります。
お得なのはどっち?
まとめると、精度の高い実測値を取得したい、何度も同じ場所をモニタリングしたい、エリアが広範囲や傾斜地を含む場合にはレーザーが有利です。一方、平坦である程度限られた狭範囲の場合や、平板測量のように建物の角のデータを必ず押さえたい場合には写真が有利です。つまり、現地の状況に応じて2つのUAVを上手に使い分けることが良いでしょう。
今後、AI、ICT、VRなどのDX(デジタルトラスフォーメーション)が日常的になることや、土木業界でもCIM、BIM、さらにはグリーンレーザーが低価格になれば、汎用性や利用価値が高いレーザーUAVが今後の主流になるでしょう。
まとめ
- 広範囲や傾斜地ではレーザーが有利。狭範囲で平坦なら写真で十分。
- 膨大な人件費がかかる写真では、AIなどDX社会や働き方改革に合わない。
- レーザーは二次利用や精度が優位で、成果提出まで迅速にできる。
- トータルコストは狭範囲なら写真、広範囲ならレーザーは同額か安くなる。
長岡達哉(ながおか・たつや)
リモートセンシングを専門とし災害現場のUAV測量を行う。キャンプや川下りなどアウトドアが趣味で、最近はテント泊に明け暮れている。