土と石の強化保存剤

風化から守れ、人類の地球の歴史財産

土や石は長い時間をかけて地球が育んだ自然鉱物です。その貴重な鉱物からできている遺跡や遺物、地層断面などを風化から守ります。

土および石造遺物・遺構の修復・強化・保存剤として、弊社と国立福井工業高等専門学校が共同研究開発しました。近年、世界に残る遺跡・遺構を修復保存し、観光資源・教育材料に活用する傾向が高まっています。そのような中、これまで野外における強化保存剤には、アクリル樹脂やエポキシ樹脂が多く用いられてきました。これらの処理方法は煩雑な上、処理後の乾燥に長時間を要すだけでなく、処理後遺構の表面に照りや暗色化が見られ、遺跡・遺構として自然に近い状態で保存することは難しく、また、環境汚染物質の流出もあり、保存処理現場からはさらに良い強化保存剤が求められてきました。

TOTはケイ素を含有するアルコキシド溶液にエチルアルコール等を溶剤として加え、そのアルコキシド溶液を加水分解重縮合させたものです。保存あるいは強化対象物に対し、本薬剤溶液を塗付・散布あるいは含浸により浸透させすることによって、対象物の粒子間で薬剤が重合固化し、強度の向上を図ることができます。これまで使用されてきた、高分子樹脂系薬剤と異なり浸透性もよく乾燥も早いという特徴をもち、また、使用している材料がケイ素(Si)であることから、元来の土の成分となじみやすく、自然に近い薬剤といっても過言ではありません。さらに、これまでの保存剤に溶媒として多く使用されているケトン類を使用せず、エチルアルコールを使用していることから、人体や環境に優しい、クリーンマテリアルタイプの強化保存剤です。TOTは3つの用途に合わせた商品があります。

  • TOT(質感・色調はそのまま、見た目は変わらず強度をアップ。遺構などに対応)
  • TOT-V(接着効果でルーズな砂にも対応。表面コーティングにも最適)
  • TOT-S(浸透厚さ最大15倍。速乾性アップでストロング保存剤)

TOTが教育遺産や土木遺産の保存にも利用

【教育遺産の保存】
    
80年を過ぎた学校の石造門柱は、その歴史を刻んできた地域の教育遺産として、まさに歴史的な文化財です。風化が激しく今後も保存を続けるために、TOTによっ
て強化処理を行い、風化部分の復元を行いました。

 

約80年以上経過した学校の門扉をかつての風合いを残しながら、保存処理しました。

【土木遺産の保存】
①海底地すべり地層の保存

およそ200万年前に海底2,000mで発生した巨大地震によってできたと考えられる乱堆積層です。
この地域は、およそ400万年前から100万年前の新生代新第三紀には、水深1,500mから2,000mの海底にあって、砂や泥が堆積していました。ところが、約200万年前に巨大地震が発生、砂層が液状化し、広範囲の地すべりを引き起こしました。その際、ばらばらに回転するなどして、このような混沌とした乱堆積層になったと考えられます。
当社の「土と石の強化保存剤TOT」は、この日本最大級の大規模海底地すべり地層の保存にも使用されています。

②旧河川堤防盛土の保存

旧河川の築堤盛土は、土木遺産としてとても貴重な土構造物です。歴史的な空間を保全整備するために、TOT処理を行い旧断面を露頭しました。

■ 主な施工実績
実施年月|件名|場所
1997.08 チャルチャパ遺跡 エルサルバドル
1998.03  柴田神社 (北の庄城跡)石垣遺構強化処理 福井県福井市
1998.05  三峰山城跡 切岸遺構強化処理 福井県吉田郡永平寺町
1998.08 高尾成畑遺跡 列石遺構強化処理 山梨県北都留郡丹波山村
1999.04 野島断層 (河野邸敷地内)断層面強化処理 兵庫県津名郡北淡町
2000.07 福岡町加茂 石塔強化処理 富山県高岡市
2002.06 車籠埔断層地震断層 台湾台中県霧峰郷
2003.06 林・藤島遺跡 足跡保存処理 福井県福井市
2003.08 柴田神社 (北の庄城跡)石塔表面強化処理 福井県福井市
2006.12 車籠埔断層地震断層 台湾台中県霧峰郷
2009.01 旧河川堤防盛土 滋賀県草津市
2009.06 学校の旧石造門柱修復保存 福井県小浜市
2009.07 石塔「九重塔」の強化保存処理 福井県敦賀市
2010.03 海底地すべり地層の保存 千葉県
2010.09 史跡村上城天守遺構保存処理工事 新潟県村上市
2010.09 ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡処理 イタリア

■ TOT販売実績(2014年8月現在)
納入先|件数
官公庁・公共機関 76件
教育機関 20件
民間 75件

その他、お困りごとがありましたら、何なりとお問い合わせください。